睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸回数が減る低呼吸と呼吸が止まる無呼吸を繰り返す疾患で、血中酸素濃度が大幅に低下して全身が酸素不足に陥ります。無呼吸状態になると、胸腔の圧力低下によって心臓に負担がかかり、また脳が覚醒することで交感神経が優位になり、血圧上昇が起こって血管や心臓に負担がかかります。 睡眠が中断されることで、睡眠の質が低下し、日中の活動時間中に集中力の低下や強い眠気が起こります。睡眠時無呼吸症候群が原因の重大な事故は過去に何度もニュースなどで報道されています。日本国内には約200万人の羅患者がいると言われており、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を合併することが多く、深刻な脳血管疾患、心疾患などのリスクが上昇するため注意が必要です。
合併症
心臓病
睡眠時無呼吸症候群を発症している方は、心血管狭窄や閉塞などが起こりやすいと報告されています。また、狭くなった冠動脈を治療した方で、睡眠時無呼吸症候群を発症している方は、術後に冠動脈血流悪化が起こりやすい傾向にあります。
- 心不全は4.30倍
脳血管障害
脳血管障害を発症した方を対象に3年間行った追跡調査で、深刻な睡眠時無呼吸症候群の方は脳梗塞や脳卒中の発症リスクが3倍以上高くなることが報告されています。
- 脳卒中は3.51倍
高血圧
日本で実施された大規模調査によると、睡眠時無呼吸症候群は高血圧の発症・進行のリスク要因になり、高血圧の方は睡眠時無呼吸症候群になりやすいと報告されています。
- 高血圧は2.14倍
種類
睡眠時無呼吸症候群は2種類に分けられ、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)(脳幹の呼吸中枢からの指令が一時的に途絶えてしまう)と閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)(空気が通過する気道が閉塞することで起こる)があります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の方が患者数が多いです。
症状
検査
エプワース眠気尺度 (ESS:Epworth Sleepiness Scale)
エプワース眠気尺度 (ESS:Epworth Sleepiness Scale)は、睡眠時無呼吸症候群の可能性を自分でチェックするための判断材料として有用です。以下にチェック表があるので、是非試してください、11点以上が睡眠時無呼吸症候群の発症の可能性があり、16点以上だと重症とされます。11点以上あった方は、当院まで受診してください。 質問は様々な生活場面での眠気の有無や状態を確認するもので、項目ごとに0~3点を付けて頂き、合計点で診断します。
- 眠ることはない(0点)
- たまに眠ってしまうことがある(1点)
- 頻繁に眠ってしまうことがある(2点)
- ほとんど眠ってしまう(3点)
場面 | 点数 | |||
---|---|---|---|---|
テレビを見ているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
座って本を読んでいるとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
座って人と会話しているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
昼食後に静かに座っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
午後に横になって休憩しているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
劇場や会議など大人数の場所で座っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
自身で運転中に信号や渋滞で数分止まっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
簡易検査(終夜睡眠ポリグラフィ検査)
正常 | 軽度 | 中等度 | 重度 | 最重症 | |
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無呼吸低呼吸指数(AHI) | 0~5 | 6~20 | 21~30 | 31~50 | 51以上 |
簡易検査結果の評価
AHI:40~ | CPAP療法が保険適応となります。 |
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AHI:15~40 | すぐにはCPAP療法は保険適応となりません。 精密検査をお勧めいたします。 精密検査でAHI:20以上であれば、CPAP療法が保険適応となります。 |
AHI:5~15 | 生活習慣の改善をご提案いたします。 ご希望の方は精密検査をお受けいただくことも可能です。 |
精密検査(終夜睡眠ポリグラフィ検査)
精密検査結果の評価
AHI:20~ | CPAP療法が保険適応となります。 |
---|---|
AHI:5~20 | 生活習慣の改善をご提案いたします。 |
終夜睡眠ポリグラフ検査 (PSG)
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)は入院を伴う詳細な検査で、呼吸運動や酸素濃度のみならず、いびきの状態、体温、炭酸ガス濃度、眼球運動、脳波、心電図なども測定することでより正確なデータを得ることが可能です。
PSGには、簡易検査と精密検査があります。
治療
生活習慣改善
肥満などの生活習慣病は閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスク要因のため、食事によるカロリーコントロールや運動による減量が必要になります。飲酒は筋肉を緩ませてしまい、睡眠中の低呼吸や無呼吸が起こりやすくなるため、できる限り控えるようにしましょう。また、仰向けの姿勢で寝てしまうと気道が閉塞しやすいので、横向きで寝るようにしてください。
CPAP療法
CPAP療法は睡眠中にマスクを装着して、気道の狭窄や閉塞を防ぎ、適切な圧力の空気を排出して陽圧を保つ治療法で、持続陽圧呼吸療法とも呼ばれています。低呼吸や無呼吸が起こらなくなることによって、日中の強烈な眠気や集中力低下といった症状も次第に解消されていきます。また、高血圧、糖尿病、脳血管疾患、心疾患などの予防にも有効です。欧米や日本では既に、CPAP療法は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の基本療法になっています。
検査で一定の基準を満たした方は、CPAP療法を保険適応で受けることが可能です。
当院では、フィリップス社のCPAP装置(ドリームステーション)を導入しております。
診察の流れ
1問診
問診にて医師が自覚症状などを丁寧にお伺いします。
2簡易検査
簡易検査装置(ウォッチパット)をお貸しするのでご自宅で呼吸状態や酸素濃度を測って頂きます。就寝時に手と胸にセンサーを装着してください。
3再受診
測定後は検査機器をご返却頂き、1時間あたりの低呼吸と無呼吸の平均回数である無呼吸低呼吸指数(AHI:ApneaHypopneaIndex)に基づいて診断します。
無呼吸低呼吸指数(AHI)
5未満 | 正常です。 |
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5~20 | CPAP療法以外の治療法を検討します。 生活習慣の改善をご提案しますが。 ご希望の方は精密検査を受けていただくこともできます。 とくに心疾患や脳卒中の既往がある方には精密検査をお勧めします。 |
20~39 | 自宅で行うことのできる精密検査(終夜睡眠ポリグラフィ検査)にて詳細なデータを得た後、CPAP療法が適しているか検討します。 |
40以上 | 治療はCPAP療法が適切であり、保険適応となります。 |
4精密検査
精密検査装置(スリーププロファイラー)をお貸しします。 簡易検査よりも多くのセンサーを身体に装着させて、ご自宅で呼吸状態や酸素濃度を測って頂きます。 就寝時に手や顔などにセンサーを装着してください。